バーチャル應典院 イントロダクション
絵本「指紋町の人々」案 より
ヤギの夫婦
ぼくたちを知らない人にとって、ぼくらは存在しない。
わたしたち、こんなにここにいて、愛し合っているのに?
こんなにここにいて、愛し合っているのに、だよ。
変だよ。私は物質で、あなたも物質のひとつなのに。だってこんなにも暖かいのよ。
ぼくにとってお前はここにいるけど、お前にとってぼくが本当にここに存在するのかはわからない。
え、そんなこと言わないでよ!
あなたはここにいるよ!
これはただのセンチメンタルではないのだ。ぼくたちがここに存在するために、ぼくはこの指紋町をテーマパークにしなきゃならないんだ。
うん。この町を楽しんでもらって、どんどんここの町のことを知ってもらわなきゃ。
しかし、町の人はどうかな。
いいよ、わたしたちでこっそり知ってもらおうよ。みんな観光には疎いんだから。
いや、こっそりはよくないよ、おまわりさんがここの観光客に対して厳しいだろう?
そうね、みんなティラノサウルスに食べられて、クラウンを巻き上げられているわ。
ぼくたちを知ってもらうにはどうしたらいいんだろう。
ね、最初のうちだけでいいの。こっそりはじめようよ。ね。
うむぅ。
あのね、私いいこと思いついたの。
観光にきたお客さんに、ここの住民のフリをしてもらうの。
え?たとえば?
仕事してもらうとか、お店で物を買ってもらうとか!今そういう現地体験型の観光が流行っているのよ。
そうなのか!ぼくはね、そういった最新情報には疎いんだよ。
それでね、写真を撮ってもらっていいようにするの!
え、それは、ここの人たちに同意をとらなきゃ。
じゃあ、同意をとりましょ。そこからはじめよ!
うん。それくらいからなら、ぼくも動ける気がしてきた!
やったね!あなたは存在する。
だから、あなたのやりたいことを今、出来ることから具体的にやっていきましょう!
ぼくはきみのそういったバカでないところが好きだよ。
男尊女卑ね!ただの役割分担でしょ!?
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〜こうして、ヤギの夫婦は指紋町をテーマパークにするべく立ち上がった。
あなたも港へ着いたら滞在費を支払って、指紋町で住民のフリをして遊びましょう!〜
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